小学校の授業で必ず習ったであろう公害事件を覚えていますか?
熊本県で起きた「水俣病」です。
この水俣病は水銀が原因とされており、熊本だけでなく、世界中で同じような被害者が出ています。
そこで2013年に水銀の使用量を制限した世界条約「水銀に関する水俣条約」が制定されました。
この条約の規制開始日は、平成30年の1月1日です。
今回はこの条約とはどういうものなのか、また規制が開始されることでどのようなことが変わっていくのかを、詳しくご説明していきましょう。
水銀に関する水俣条約とは?
冒頭で触れたように、「水銀に関する水俣条約」は水銀の使用量に制限をかける規制です。
水銀に関する水俣条約とは、水銀の一次採掘から貿易、水銀添加製品や製造工程での水銀利用、大気への排出や水・土壌への放出、水銀廃棄物に至るまで、水銀が人の健康や環境に与えるリスクを低減するための包括的な規制を定める条約です。
水銀は廃棄処理をした後自然に戻ることはありません。
また人体にとって神経毒となるなど、地球にも人間にも害でしかない物質です。その水銀を規制する法律が、ようやく平成30年の1月1日から開始されるのです。
今後どのようにかわるのか?
この規制が開始されることで、水銀を使用した商品の製造や輸出入が禁止されることになります。
例えば身近なものですと、電池もその規制対象になります。
他にも電気式ではない体温計や温度計もそうですし、中には化粧品もその対象になるものがあります。
当然ながら、規制対象となる商品がこれから新しく製造されることはもうありません。
詳しくは環境省が発表している水銀添加商品を確認してみましょう。
- 電池(水銀含有量2パーセント未満のボタン形電池を除く。)
- 水銀含有量5mg以上で30w以下の一般的な照明用のコンパクト蛍光ランプ(CFLs)
- 一般照明用の直管蛍光ランプ(LFLs)
- 水銀含有量5mg以上で60w未満の三波長形蛍光体を使用したもの
- 水銀含有量10mg以上で40w以下のハロリン酸系蛍光体を使用したもの
- 一般的な照明用の高圧水銀蒸気ランプ(HPMV)
- 電子ディスプレイ用の冷陰極蛍光ランプ(CCFL)及び外部電極蛍光ランプ(EEFL)
- 水銀含有量3.5mg以上で長さが500mm以下のもの
- 水銀含有量5mg以上で長さが500mm超1500mm以下のもの
- 水銀含有量13mg以上で長さが1500mm超のもの
- 化粧品(水銀含有量が一質量百万分率を超えるもの)
- 駆除剤、殺生物剤及び局所消毒剤
- 非電気式の計測器
- 気圧計
- 湿度計
- 圧力計
- 温度計
- 血圧計
ちなみに一般照明として使われている高圧水銀ランプを除き、現在市販されている蛍光ランプやHIDランプなどの水銀使用ランプに関しては、すでに水銀含有量の基準をクリアしています。
現在市場に規制対象の製品は存在しませんので、製造・輸出入禁止の規制の影響はないでしょう。
また一般照明用の高圧水銀ランプは、水銀含有量に関係なく、2021年以降の製造・輸出入が禁止となります。
つまり一般照明として使われるランプのうち、「高圧水銀ランプ」だけが規制の対象であり、他は問題ないと考えて良いでしょう。
そしてこの条例によって、新たな水銀鉱山は禁止となります。
現在も稼働している既存の鉱山は、15年後に禁止となる予定です。
また輸出入が禁止される条約ですが、例外もあります。
条約で定められた用途、研究用の計測器や軍事的用途、代替できない製品などに関するものであれば、規制開始後でも輸出入することが許されています。
ちなみに電気式ではなく水銀を使った体温計や血圧計については、この規制が始まる前からWHOが使用をやめるよう呼びかけていました。
それに伴い、医療業界では水銀体温計や血圧計の全廃を始めています。
この規制が開始されることで、昔ながらの医療機器や照明器具がなくなっていくことになるのです。
現在使っている水銀灯は使えなくなるのか?
水俣条約が施行されることで、「現在使っている水銀灯はもう使えなくなるのではないか」と不安に思うこともあるでしょう。
ここで水俣条約に関する条約を見てみましょう。
一般照明用のランプのうち水銀を使用した特定のものについては、製品ごとに、平成 30 年 (2018 年)1 月 1 日又は平成 32 年(2020 年)12 月 31 日以降、「水銀による環境汚 染の防止に関する法律(略称:水銀汚染防止法)」によって製造が原則として禁止され、「外 国為替及び外国貿易法(略称:外為法)」によって輸出・輸入が原則として禁止されます。
こう記載されています。
つまり水俣条約は、規制対象となるランプを製造すること、またその規制対象ランプを輸出入することを禁止しているのです。
そのため規制施行後でも、水銀灯を使い続けることは禁止されていません。
またそれに伴い、水銀灯を販売すること、購入すること、また修理や交換することなども、一切禁止されていないのです。
しかし、製造・輸入ができないということは、現在使っている水銀灯が故障した場合、何の保証も無く修理もできないという事です。
つまり、実質水銀灯から切り替える必要があるということです。
「強制的に切り替えさせられるなんてあんまりだ・・・」
と感じた方もいるでしょう。しかし、ご安心ください。
水銀灯からLED照明に切り替える場合は助成金を利用することができます。
助成金などの補助はないの?
水銀灯からLEDへの切り替えは行政も進めている施策になります。
その為、あらゆる行政団体等から助成金が提供されているのです。
以下ではLEDから水銀灯に切り替える際の助成金について詳しく解説しております。
「水銀に関する水俣条約」のポイントを抑えておこう
とうとう規制開始が平成30年1月1日に迫った「水銀に関する水俣条約」、これによって水銀による公害はグンと減ることになると期待されています。
この条約に関して、いくつかのポイントをまとめました。
- 禁止されるのは製造することと輸出入のみ
- 使用・販売・購入・修理・交換などは禁止されていない
- 現在製造されている水銀を使用した商品は規制対象外の含有量である「水銀に関する水俣条約」に関する費用を補助する制度はない
これが今回のまとめになります。
一般的な家庭にとってこの規制による影響は大きくありませんが、地球や人間にとっては大きな1歩となる大切な条約になるでしょう。